2002年度学会賞

研究奨励賞

「炭素とセラミックスとの複合化による機能発現」
山本修 神奈川工科大学応用化学科助手

 山本修氏は、炭化ケイ素傾斜層を金属シリコンと炭素基材との固相反応により形成し、その形成過程を解明した。さらに、炭化ケイ素傾斜炭素材の表面にムライト薄膜を形成することによって、室温から1600℃までの酸化性雰囲気下で極めて優れた耐酸化性を示すことを明らかにした。この成果は炭素材料の耐酸化性の改善に対して酸化物薄膜の形成が重要であることを明らかにしたものであり、宇宙往還機の外壁材など航空・宇宙分野の発展に寄与した。また、同氏は、酸化亜鉛および酸化マグネシウムのナノサイズ微粒子を含有した活性炭素を開発し、細菌の吸着特性および抗菌活性を検討し、活性炭素の表面に多量の細菌が吸着すること、および暗所において強い抗菌活性を発現することを見出し、それらの機構を明らかにした。
 これらの研究業績から、同氏は炭素材料学会研究奨励賞の受賞に適するものと判断した。

「低結晶性炭素の構造解析に関する研究」
吉澤徳子 産業技術総合研究所主任研究員

 吉澤徳子氏は、X線回折、透過電子顕微鏡、電子線回折を駆使して低温処理炭素、活性炭カーボンエアロェルなど炭素六角網面が十分に発達していない炭素の構造解析、評価手法の研究を行ってきた。特に、CVD非晶質炭素膜について、上記手法による定量的結果から原子レベルの構造モデルを提案し、高い評価を得ている。また、金属錯体などの触媒作用を利用したメソ孔性活性炭を取り上げ、メソ孔の生成過程や組織構造変化を追求した。さらに石炭のX線回折強度の解析から石炭の構造解析標準化法を構築・確立した。このように構造解析が困難であった各種低結晶性カーボンの構造解析法を一貫して展開し、評価法の確立に貢献してきた。
 これらの研究業績から、同氏は炭素材料学会研究奨励賞の受賞に適するものと判断した。

技術賞

「核融合炉ダイバータターゲットプレートの黒鉛・金属異種材料の接合に関する研究」
石山新太郎 日本原子力研究所主任研究員

 石山新太郎氏は表記研究題目に取り組み、ろう接試験を実施して今日の接合技術の基礎を築くとともに、ターゲットプレート設計モデルの選定や寿命評価を実施するための膨大な照射データベースの構築ならびに照射応力解析手法の確立を行い、予想した照射誘起応力やターゲットプレート寿命の解析をろう接合体の照射試験により証明した。また、ロボット技術によりターゲットプレート損傷部のその場補修方法を考案し、この考案を実証するための基礎試験を実施し成功した。以上の成果により、ITERなどの核融合炉におけるターゲットプレートの最適構造モデルに関する重要な知見を得るとともに運転中に損傷したターゲット部分のその場補修技術の展望を得た
 これらの研究業績から、同氏は炭素材料学会技術賞の受賞に適するものと判断した。