研究奨励賞
「プラズマCVD法による炭素薄膜の作製とそのリチウムイオン電池負極特性に関する研究」
福塚友和氏 兵庫県立大学大学院工学研究科物質系工学専攻
福塚友和氏は、リチウムイオン電池負極である炭素材料に着目して、負極のモデル電極となる炭素薄膜をプラズマCVD法により作製し、バインダーなどの測定データの解析を複雑にする因子を排除したうえでその電気化学特性を精力的に研究した。その成果は「炭素」誌、Electrochemistry、Journalof Power Sources、 Carbonなどに公表されている。従来、プラズマCVD法による炭素薄膜はsp3系炭素からなるものが主流であったが、福塚氏は、炭化水素ガスとアルゴンガスを用いて、600℃という比較的低温の基板上にsp2系炭素薄膜を作製しうること、その結晶性はプラズマの印加電圧に依存することを明らかにした。さらに基板温度を750℃に上げると、炭素薄膜の結晶性が表面から内部にかけて向上することも見出した。炭素薄膜電極は表面が非常に平滑であるため、そこに、構造制御が可能な電極/電解質界面を構築することができる。それによって、リチウムイオンの吸蔵メカニズムおよび炭素薄膜と電解質界面におけるリチウムイオン移動反応を詳細に検討した。前者においてはリチウムイオンの吸蔵サイトを明確にし、後者では、界面電荷移動反応に高い漕性化障壁の存在することを明らかにした。これらの知見は、リチウムイオン電池炭素負極の高出入力化への設計指針を与えるものである。上述したように、福塚友和氏は表面構造を制御した炭素薄膜電極の作製により、リチウムイオン電池炭素負極に関する重要課題に対して多大の成果をもたらした。こうした成果は、学問的寄与のみでなく、産業界への貢献もきわめて大きいものと認識される。さらに今後の炭素材料科学進展への同氏の貢献が期待されることは言うまでもない。これらのことから、同氏は炭素材料学会研究奨励賞の受賞に値するものと判断する。
炭素材料学会論文賞
「炭素化した赤血球の酸素還元反応に対する触媒作用と固体高分子型燃料電池への応用」
丸山純 安部郁夫 大阪市立工業研究所環境技術課
受賞理由
掲載なし
「炭素繊維含有高分子複合体フィルムの磁場プロセッシング」
大久保貴啓* 高橋辰宏* 呉勇周** 粟野宏* 米竹孝一郎* 大石好行***
*山形大学工学部機能高分子工学科 **山形大学ベンチャービジネスラボラトリー ***岩手大学工学部応用化学科
受賞理由
掲載なし。
炭素材料学会年会ポスター賞
松井研
信州大学大学院 工学系研究科 素材開発化学専攻 東原研究室
「ホウ素ドープダイヤモンンド薄膜の構造及び廃水処理電極への応用」
柴崎健
東洋大学大学院工学研究科応用化学専攻蒲生西谷研究室(ダイヤモンド研究室)
「固液界面接触分解法によるコバルト触媒を用いた炭素ナノ材料の合成」