「炭素」論文賞
今回が第7回目で、炭素誌No.245号(2010年11月発刊)からNo.249号(2011年9月発刊)までの期間に掲載された論文・速報・ノート・総合論文・技術報告を対象として、独創性・新規性、学術・技術的貢献、波及効果(社会的・産業界へのインパクトも含める)、論文としての完成度(論理展開の妥当性・読みやすさ・表現の工夫度)などの項目について編集委員会で選考し、運営委員会で決定いたしました。ここに会員の皆様にお知らせいたします。なお、2012年度はNo.250号(2011年11月発刊)からNo.254号(2012年9月発刊予定)までを対象として選考いたします。
炭素誌へ奮ってご投稿くださいますようお願い申し上げます。
炭素材料学会論文賞
Osamu Yamamotoa) and Masayuki Fukudab)
a)Yamagata University
b)Akita University
「Effect of carbon coating on the biocompatibility of titanium -in vitro cytotoxicity evaluation using human bone marrow cells-」
(No.245 号、pp.183-187 に掲載)
推薦理由
本論文は、炭素コーティングを施したチタンインプラントの生体適合性を評価する事を目的に骨髄細胞を用いて生体外で細胞毒性評価を行った研究である。ポリビニルアルコールを高純度チタン円板に塗布した後に熱処理を施すことでチタン上に20nm程度の非晶質炭素膜を形成し、構造評価を行った。その後に骨髄から得られた間葉細胞を炭素コーティングされたチタン円板上にて培養したところ、10日後にはチタンのみの円板より多くの細胞が存在していることが確認された。同様にアルカリホスファターゼ活性や石灰化度においてもチタン単体より活性が高く、骨形成が促進される可能性も示唆された。このように、チタン材料に比較的単純な手法で炭素コーティングを施すことで材料の生体適合性が向上する結果が得られるという点で学術的に価値があり、実際にインプラントとしての利用への可能性が開けていることから産業界への波及効果もあると考えられる。以上より、本論文は論文賞にふさわしいと判断した。
炭素材料学会論文賞
阿久沢 昇a)、古茂田朋寛a)、玉田耕治a)、平山貴啓b)、今川 博b)
a)東京工業高等専門学校
b)SECカーボン株式会社
「アルミナ溶融塩電解に伴うカソード黒鉛の電気抵抗変化―電解温度の効果―」
(No.249 号、pp.191-194に掲載)
推薦理由
本論文は、アルミニウム製造過程のアルミナ溶融塩電解中に生じるナトリウムのインターカレーションによるカソード黒鉛の劣化・消耗について検討したものである。人造黒鉛ブロックで作成した小規模の電解槽を用いて溶融塩電解を行い、電解前後と電解途中のインターカレーションの進行とカソード黒鉛の劣化程度を詳細に調べている。それにより、920°C以下の低温での電解では、大量のナトリウムのインターカレーションと脱離が起こり、カソード黒鉛を劣化させていることを明らかにした。さらに、950°C以上の高温での電解では、インターカレーションはわずかしか起こらず、カソード黒鉛の劣化・消耗を防げることを見いだした。本論文は、アルミニウム製造技術への貢献が期待されるだけではなく、学術的にも重要な知見を与えている。また、論文としての完成度が高いと認められ、論文賞に値すると判断した。
炭素材料学会年会ポスター賞
炭素材料学会では、2004年(第31回)年会より年会ポスター賞を設けています。2011年(第38回)年会では学生諸君が発表したポスターを対象として、独創性・新規性、技術的貢献度、発表者の理解度、ポスターとしての完成度(論理展開の妥当性・読みやすさ・表現の工夫度)などの項目について評価し、5 件選考しました。ここに会員の皆様にお知らせいたします。
山田峻資
愛知工業大学大学院 工学研究科 材料化学専攻 エネルギー材料化学研究室
「CVD法による黒鉛へのシリコンコーティングとリチウムイオン電池負極特性」
池田 基
群馬工業高等専門学校 物質工学科5年 太田研究室
「CNTを用いた熱電変換材料の作製」
寒河江拓也
東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 京谷研究室
「プラスミドDNAとmRNAのカーボンナノ試験管への導入と遺伝子輸送への応用」
諸井孝平
信州大学大学院 工学系研究科 素材開発化学専攻 服部研究室
「レーザーアブレーション法によるカーボンナノ粒子の作製とその発光特性」
山本健太郎
東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 京谷研究室
「ゼオライト鋳型炭素の細孔径可逆制御に伴う分子吸着量の変化」