本年は炭素材料学会の設立から60 周年にあたり, 特別記念講演会が平成21年11月19日(金)に千代田区六番町にある主婦会館プラザエフにおいて開催された。本講演会は日本学術振興会炭素材料第117委員会と共催の形を取り, 第一部に学振117委員会の特別講演会, 第二部に炭素材料学会60周年記念行事, 第三部に祝賀会という形式で開催され, 産業界, 学界から67名の出席(招待講演者を含む)があった。第一部は川口雅之大阪電気通信大学教授司会のもと, 寺井隆幸学振117 委員会委員長の開会挨拶に続き, 産業技術総合研究所の羽鳥浩章氏が「炭素材料の構造制御とエネルギー貯蔵技術への応用」というテーマで, また東北大学多元物質科学研究所の京谷隆教授が「鋳型炭素化―研究の流れ―」というテーマでそれぞれ特別講演を行い, 活発な質疑が交わされた。第二部においては, 西澤節氏司会のもと, 京谷隆運営委員長の開会挨拶に続き, 遠藤守信会長によって「炭素材料学会60年の歩み」として学会設立以来の歴史紹介が行われた。その後,「炭素材料学会創立60周年に寄せて」というタイトルで, 大谷杉郎元会長, 真田雄三元会長, 稲垣道夫元会長, 白石稔前会長, 都竹卓郎元117委員会委員長, 高橋洋一元117委員会委員長(寺井隆幸委員長代読), 安田榮一前117委員会委員長によって, それぞれの在任中のエピソードや, 夏季セミナー立上げ期の様子, CARBON国際会議が現在の形に至るまでといった興味深い話題が紹介された。炭素材料研究の歴史についても, バルク材料からナノカーボンへと繋がる構造面における切り口で解説される先生がいらっしゃる一方で, ブラシ, 電極, 炭素繊維, 複合材料といった応用面での変遷を御紹介される先生もおられ, まったく聴衆を飽きさせることなく2時間半が経過した。最後に羽鳥浩章氏の閉会挨拶で第二部を終了した。第三部は産総研の吉澤徳子氏司会のもと,鏑木裕編集委員長と遠藤守信会長の挨拶, 寺井隆幸学振117委員会委員長の乾杯挨拶に引き続き, 約1時間の歓談, 阿久沢記念委員会委員長の挨拶, 最後に出席者全員での記念撮影が行われ盛会のうちに終了した。
(独)理化学研究所 小林知洋