会長の挨拶

炭素材料学会の機能の充実に向けて

炭素材料学会長 京谷隆

尾崎純一
炭素材料学会 会長

 昨年12月8日に千葉大学で開催された炭素材料学会第43回通常総会において,炭素材料学会会長に指名されました群馬大学の尾崎純一です。どうぞよろしくお願いいたします。
 さて,昨年までの総会資料をご覧になってお気づきのことと思いますが,炭素材料学会の抱える問題の一つとして会員数の減少があります。会員よりお預りする年会費は本会の大きな収入源であり,会員数の減少は今後の学会活動を大きく制限しかねないからです。これまで炭素材料学会を魅力的にすることで会員数減少の抑制する方向での努力がなされてきました。改めてこの問題の対処するにあたり,私は「炭素材料学会の役割は何か」という原点に戻り考えてみました。
 本会の目的は会則にあるように「炭素材料に関連した科学ならびに技術の進歩を図り,併せてその知識を普及に資すること」です。これを次の三つの機能に分けて考えてみました。(1)炭素材料に関する情報交換や学術討論の場を提供するなどの会員へのサービスを行うこと,(2)炭素材料の魅力を広くアピールし,炭素材料研究者の人口増加を図ること,(3)炭素材料に関する知見を集積,体系化して炭素材料学を創成すること。以下,各機能についての私の考えを記します。
 まず会員へのサービスという機能について述べます。本会は広く会員全員に開かれた学会です。学会に対するご意見やご要望を聞き,これらを反映しつつ会を運営することが求められています。とはいえ,学会に対し意見を伝えることはなかなか難しいものです。そこで,運営サイドからいくつかの提案をさせていただき,それらに対する会員の反響を見つつ多くの会員にとって良いサービスとは何かを探りたいと思います。提示する案はたとえば,炭素材料に関するプロジェクト実現を狙う研究会の立ち上げ,炭素材料研究の基本的書籍などの出版の企画,年会にて開催されているシンポジウムの充実などが考えられます。これらについては運営委員会とも十分に協議し進めていきます。
 次に炭素材料の魅力をアピールし,この材料の研究者人口の増加を図る機能について述べます。炭素材料の魅力は研究者により異なるでしょう。私は炭素材料の持つ「複雑さ」を理解し制御することに魅力を感じています。炭素化過程では,得られる固体生成物の電子的性質や化学的特性が大きく変化します。これらの変化は,原料となる有機物が環化,芳香族化,縮合などの化学的な変化により引き起こされます。この複雑な炭素化反応を制御できれば,多様な特性を持つ炭素材料が得られるはずです。しかしながら,この「複雑さ」の理解は不十分なのが現状です。炭素材料は生活に密着した古い材料です。それにもかかわらずこの材料には未解明の現象や未知の特性が多く残っており,研究対象として魅力的です。この魅力を「炭素」誌,セミナー,年会やホームページといった本会の持つメディアを通して世の中にアピールすることで炭素材料に新規参入する研究者を増やすことができるのではないでしょうか。
 最後に炭素材料学を創成する機能について述べます。ここでは従来の炭素材料に関する知見を集積し体系化することは,炭素材料学の創成の重要な過程です。これに加えて,炭素材料以外の分野に特有なものの見方や考え方を炭素材料の世界に導入することで,炭素材料をより深く理解できるようになります。このことは,現在の炭素材料の研究でX線回折,X線光電子分光,ラマン散乱,電気化学測定などが日常的に使われていることを見ればわかります。これらの測定は,もともと炭素材料のために開発されたものではありませんが,これらの知識を適切に炭素材料に応用することで,この材料のより深い理解へと導いてきました。以上のように,従来の知識の体系化とともに炭素材料にとっては新しい知識を導入することにより炭素材料学の創成が促されます。このプロセスを推し進めることも本会の機能の一つです。
 上に述べた三つの機能を充実させることで,炭素材料学会をより魅力的なものとし,より多くの研究者の参入を得て安定な運営に持っていければと考えています。2020年には京都で国際炭素会議(Carbon 2020) が開催されます。この会議は炭素材料学会の存在を国内外にアピールする絶好のチャンスです。この会議に向けて組織委員会を立ち上げ準備を進めています。会員の皆様には,この会議の成功はもとより,日本独自の発信ができるよう積極的なご協力をお願いいたします。
 最後になりましたが,2017年が会員皆様に取りまして,良い年になりますよう祈念しております。