学会賞表彰

2019年度

 2019年度の炭素材料学会学術賞,技術賞,研究奨励賞,論文賞の各賞は, 規定に基づき各選考委員会の厳正な審査により選出され,会長による評議員会への報告,評議員会の承認を経て,次のように決定されました。
受賞者各位に対し,去る11月29日岡山大学において開催の第46 回通常総会の席上にて表彰が行われました。
 また,炭素材料学会創立70周年を記念して功労賞を制定し,規定に基づき運営委員会より推薦され,会長による評議員会への報告,評議員会の承認を得て,次のように決定されました。
 受賞者各位に対し,去る11月29日岡山大学において開催の創立70周年記念行事の席上にて表彰が行われました。会員の皆様にお知らせいたします。

【功労賞】

炭素材料学会運営委員会は,本会の発展に大きく寄与した各氏について,その功績大なることを認め,炭素材料学会功労賞を授与し敬意を表します。

真田雄三氏 北海道大学名誉教授
高橋洋一氏 東京大学名誉教授
菱山幸宥氏 東京都市大学名誉教授
稲垣道夫氏 北海道大学名誉教授
白石 稔氏 東海大学元教授
安田榮一氏 東京工業大学名誉教授
遠藤守信氏 信州大学特別特任教授

【学術賞】
川崎晋司氏 名古屋工業大学 教授
「ナノカーボン材料の物理・化学修飾と材料特性評価に関わる研究」

 川崎晋司氏は,フラーレンやカーボンナノチューブなどのナノカーボンをベースに化学修飾などにより新しい機能を付与した材料を多数合成し,その構造・物性に関わる基礎的な研究を行ってきた。蓄電デバイスなど各種機能材料としての機能発現メカニズムの解明に関して重要な成果を収めている。
 フラーレンのフッ素化はバンドギャップを大幅に拡大するなど電子構造への摂動が大きいだけでなく,その集合体の構造・物性も大きく変える。川崎氏は,C60F36, C60F48 の結晶構造および高温での構造相転移を粉末X線回折実験などにより詳細に解き明かした。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のフッ素化についても各種分光測定により電子構造,凝集体構造に与える影響を明らかにしている。同氏は,数万気圧という超高圧力下で各種ナノカーボンの重合処理を行った試料についても基礎物性から応用まで幅広い研究を行っている。C60分子が連結したフラーレンポリマーについて結晶構造など基礎的なことを調べるだけでなく,その電池電極特性を評価するなど挑戦的な研究も行っている。また,SWCNTの融合について,放射光を用いた超高圧力下でのその場X線回折実験によりそのメカニズムを明らかにするとともに,力学特性が単体のものと大きく異なることを示した。
 近年は,SWCNTのチューブ中空にさまざまな分子を導入した内包SWCNT試料について次世代電池電極としての特性評価を行うというユニークな研究を展開している。この内包試料は,電解質イオンの捕捉は内包分子が担い,内包分子の固定と内包分子への電子伝導パスをSWCNTが担うという新しいコンセプトの電極材料である。従来は電極活物質に利用できなかった分子を活用でき,材料設計の幅を広げる新しい取り組みとして期待されている。
 以上のように,川崎晋司氏はナノカーボン材料の物理・化学修飾により,その構造・物性に摂動を与え,新たな機能性材料を創造する研究において大きな成果を上げている。このことから,同氏の業績は炭素材料学会学術賞に値するものと判断できる。

【研究奨励賞】
干川康人氏 東北大学多元物質科学研究所 助教
「炭素と無機セラミック・有機物・高分子材料との異種接合界面に関する研究」

 干川康人氏は,炭素と無機セラミック・有機物・高分子材料との異種接合界面に注目した研究を精力的に展開してきた。同氏は規則性ナノ細孔を持つメソポーラスシリカをCVD法で炭素被覆することで多孔質電極へ応用する研究に取り組み,シリカ表面に導入したトリメチルシリル基の熱分解で生じるSiラジカルの触媒効果を用いた新規な炭素被覆化手法の開発に成功した。この手法によってナノシリカ材料に均一な炭素被覆が容易になり,様々な多孔質電極材料への展開を可能とした。また,一方向にそろったナノ貫通孔を持つアルミニウム陽極酸化皮膜に炭素被覆することで新規なバイオ燃料電池用の酵素電極を開発した。酵素電極の性能向上には固定化する酵素の配向制御が重要であるが,同氏は酵素の立体構造と炭素電極面との静電相互作用を利用したユニークな手法によって配向制御に成功した。近年の研究では,カーボンブラック上の水素末端エッジサイトと化学結合するバウンドラバー量を初めて定量的に評価したほか,炭素被覆アルミナナノ粒子をモデルフィラーとすることで,ゴム/炭素界面の詳細な化学構造ならびにこれまで未知であったバウンドラバーの特異な熱物性などを明らかにしつつある。
 以上のように,干川康人氏は,炭素と異種材料との接合界面に注目した多角的なアプローチから多くの優れた成果を上げており,今後も炭素材料分野での一層の活躍が期待される。このことから,同氏の業績は炭素材料学会研究奨励賞に値するものと判断される。

【論文賞】
Yuu Watanabe a),Soshi Shiraishi b)
a) Department of Chemistry and Chemical Biology, Faculty of Engineering, Gunma University, Japan
b) Division of Molecular Science, Graduate School of Science and Technology, Gunma University, Japan
「Capacitance and electrochemical stability of activated carbon electrodes in sulfone electrolytes for electric double layer capacitors」

 本論文は,電気二重層キャパシタ(EDLC)用の電極として,細孔サイズの異なる3種の活性炭素繊維(ACF) の電気化学的安定性ならびに容量特性を,四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウム電解質塩を含む,スルホラン,イソプロピルメチルスルホンあるいはエチルメチルスルホンのスルホン溶媒中で調べた研究について述べている。これらの溶媒の電気化学的安定性は高いことが知られていたものの,炭素材料を電極として用いた場合の容量特性とその細孔構造との関係は明らかになっていなかった。本論文では,特に,スルホン溶媒のみの条件で,細孔サイズの異なるACFを用いて,それらの容量特性と細孔構造との関係を調べた結果が述べられている。
 まず,スルホン溶媒の場合では,プロピレンカーボネート系の場合と比べて,イオンふるい効果とレート特

田中秀樹a),瀬戸 樹a),西原洋知b),京谷 隆b),宮原 稔a)
a) 京都大学大学院工学研究科化学工学専攻
b) 東北大学多元物質科学研究所
「メタン貯蔵材料開発を指向したゼオライト鋳型炭素合成の分子シミュレーション」

 ゼオライト鋳型炭素(zeolite-templated carbon: ZTC) はゼオライトの細孔構造を転写することによって合成される多孔性炭素材料であり,ガス貯蔵,燃料電池,電気二重層キャパシタなどへの応用が期待され広く研究が行われている。本論文の著者らは炭素原子間相互作用にreaction state summation (RSS) ポテンシャルを仮定した反応分子動力学(MD)シミュレーションによってZTCの炭素ネットワーク構造を構築し,グランドカノニカルモンテカルロ(GCMC)法による窒素吸着等温線およびメタン吸蔵特性のシミュレーションを行うことで,高いメタンガス吸蔵能を示すZTCの探索を試みている。著者らは本手法により,200種以上の異なるゼオライトから形成されると期待される種々の構造のZTCについてスクリーニングを行い,そのうち13種の新規ZTCがメタン吸蔵に適していることを見いだした。なかでもZTC-BEA(BEAゼオライトを用いて作製したZTC)が優れたメタン貯蔵能を示すことが本研究により予測されている。これは仮定した貯蔵条件(温度298 K,貯蔵圧3.4 MPa,脱着圧0.1 MPa)において,ZTC-BEAが最適なCH4-炭素間相互作用ポテンシャルと,CH4が高密度に吸着すべき空間をもたらすためであるということを解明した。
 本研究はZTCの炭素量を最適化することにより窒素吸着等温線の高精度なシミュレーションを実現したうえで,様々なゼオライトから合成されたZTCのメタン吸蔵量をスクリーニングするところまで研究を進展させていることから,研究の完成度,材料開発への貢献度とも顕著であると評価できる。計算科学に基づく知見が新規な多孔性炭素材料の開発や物性探索に結びつくことで,今後の炭素材料の研究開発が大きく加速される可能性を示した論文であることからも,本論文は炭素材料学会論文賞としてふさわしいものと判断される。

「炭素材料学会年会ポスター賞」

 炭素材料学会では,2004 年(第31回)年会より年会ポスター賞を設けています。また,2019 年(第46回)より学生口頭発表賞も新たに設けました。2019 年(第46回)年会では学生諸君が発表したポスターおよび口頭発表を対象として,独創性・新規性,学術・技術的貢献度,発表者の理解度,ポスターとしての完成度(論理展開の妥当性・読みやすさ・表現の工夫度)あるいは口頭発表スライドの完成度(論理展開の妥当性・見やすさ・表現の工夫度)などの項目について評価し,ポスター賞6件,口頭発表賞4件を選考しました。ここに会員の皆様にお知らせいたします。

土屋良太
東洋大学大学院理工学研究科応用化学専攻 ダイヤモンド研究室
「接触反応による繊維状ナノ炭素/カーボンペーパー複合材料の合成と評価」

村田博雅
筑波大学大学院数理物質科学研究科ナノサイエンス・ナノテクノロジー専攻 末益・都甲研究室
「金属誘起層交換合成によるグラファイト薄膜の合成と薄膜二次電池応用」

李 R錫
九州大学大学院総合理工学府量子プロセス理工学専攻 素子材料工学研究室
「コールタールピッチ由来非晶質炭素コーティングによる黒鉛負極の低温LIB特性の向上」

吉井丈晴
大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻 山下研究室
「カーボンブラック担持ピレン基修飾Pdナノ粒子触媒の調製とその部分水素化反応特性」

鈴木隆太郎
愛知工業大学大学院工学研究科材料化学専攻 エネルギー材料化学研究室
「気相法を用いた活性炭細孔内部への金属ナノ粒子の高分散化とそのX線吸収スペクトル解析」

渡邉裕介
名古屋工業大学大学院工学研究科生命・応用化学専攻 川崎・石井研究室
「太陽光水素生成のための貴金属を使用しないナノカーボン複合体触媒の開発」

【口頭発表賞】
李 R錫
九州大学大学院総合理工学府量子プロセス理工学専攻 素子材料工学研究室
「加圧物理賦活による特異的な細孔構造を有する活性炭の高収率調製」

伊藤優汰
京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻 安部研究室
「水系電解液におけるアクセプター型黒鉛層間化合物の挿入脱離挙動解析」

多賀谷ともみ
群馬大学大学院理工学学府物質・生命理工学教育プログラム 白石研究室
「シームレス活性炭電極への有機化学的Nドープ」

高橋和馬
東北大学大学院環境科学研究科先端環境創成学専攻 京谷研究室
「様々な金属ポルフィリン類を前駆体とした規則構造性カーボンアロイの作製」