学会賞表彰

2007年度

【学術賞】
「低温・中高温焼成炭素材料の構造解析とリチウムイオン電池用負極材料への応用」
藤本宏之 大阪ガス株式会社 材料事業化プロジェクト部課長

 藤本宏之氏は,炭素材料のX線回折プロファイルデータの解析から,結晶構造を定量的に理解する研究に体系的に取り組んできた。その研究過程で,低結晶性,低黒鉛化度の炭素材料を中心に多大な成果を上げている。
 まず,Debyeの散乱強度式による炭素の理論回折強度計算法を確立した。また,理論回折強度式を用いて実測回折プロフィルの最小二乗フィッティングを行い,結晶子サイズL、およびLcを同時に求める二次元解析法を開発した。さらに,同様なフィッティング技術を用いて,1つの測定よりすべての炭素構造パラメータを逐次精密化する方法や黒鉛化度解析を精度よく行う方法についても提案した。 次いで,X線結晶学の分野で応用されているpseudo-voigt関数を用いたプロファイルフィッティング法を学振法にも採用することを提案し,コンピュータ上で電子ファイルを直接数学的に処理する新学振法のベースとなる解析手順,解析フローチャートを確立した。この解析方法は,本年度のJIS規格(R7651炭素材料の格子定数および結晶子の大きさ測定方法)として採用された。炭素材料の生産および使用の合理化,品質の向上に資することが期待される。
 さらに藤本氏は,低結晶性,低黒鉛化度の炭素材料の解析手法にかかわる研究成果の集大成として,高入出力型リチウムイオンニ次電池負極に適した構造的性質の炭素を設計し,ある種のコークスを出発材料として2000℃で焼成することにより,入出力特性,寿命特性,保存特性などにきわめて優れた乱層構造炭素材料の開発に成功した。この炭素材料は,NEDOで推進するリチウム電池技術開発プロジェクトにおいて,リチウムイオンニ次電池負極として採用され,非常に高性能の入出力特性を示す電池の試作に貢献した。
藤本氏は,本会研究奨励賞を平成7年度に受賞したが,その後のさらなる発展と新たな研究を展開した。これら一連の同氏の業績は,社会・産業界への高い波及効果を有するもので,学術的・技術的な観点からも炭素材料学会学術賞に値するものと判断された。

【研究奨励賞】
「燃料電池電極触媒用炭素材料に関する研究」
丸山純(大阪市立工業研究所環境技術担当)

 丸山純氏は、炭素材料の学術的基礎化学に基づく新しいエネルギーシステムとしての固体高分子型燃料電池の電極触媒用炭素材料について、ユニークな発想で独創性の高い研究を進めている。同氏は、天然有機物のカタラーゼやヘモグロビン、あるいは乳酸鉄一グリシンーグルコース系混合物の炭化熱処理によって非白金系FeNx-C触媒を開発し、これを正極に用いた固体高分子電解質型燃料電池が発電性能を有して電池として作動することを明らかにした。電極反応における触媒活性と耐久性から白金触媒を大量に必要とすることが、コストおよび資源上の問題点となって燃料電池普及上のネックとなっている。同氏の白金を用いない燃料電池用正極触媒の開発は、学術上のみならず、稀少元素の枯渇と汎用元素の機能探索という観点から、社会、産業界への波及効果の可能性が期待され、国際的にも高く評価されている。 一方、燃料電池電極触媒では、電極触媒表面と電解質とで構成される界面で電気化学反応が進行するため、界面構造の最適化が重要となる。電極触媒担体として炭素材料が一般的に用いられるが、丸山氏はグラッシーカーボン(GC)の電気化学的酸化処理により、GC表面と親水性領域、疎水性領域を併せもつ高分子電解質との界面構造が変化することを見出し、燃料電池正極反応である酸素還元反応の促進に最適な構造があることを明らかにした。 さらに、電極触媒担体として通常用いられているカーボンブラックに代えて、活性炭を用いる電極触媒は触媒活性に優れており、燃料電池性能を大幅に改善することができることも見出しており、固体高分子電解質型燃料電池の基礎技術にかかわる成果にも見るべきものがある。 これら丸山氏の独創性と先進性に富む研究業績は、炭素材料学会研究奨励賞に値するものと認められた。

【炭素材料学会論文賞】
白石壮志(群馬大学大学院工学研究科応用化学・生物化学専攻)
「炭素電解質界面における電気二重層容量の電解質イオン依存性」

(No.231号に掲載)

受賞理由:掲載なし

「炭素材料学会年会ポスター賞」

炭素材料学会では、2004年(第31回)年会より年会ポスター賞を設けています。

須賀陽介
東京農工大学大学院工学府応用化学専攻有機材料科学専修渡辺研究室
「超臨界流体プラズマ利用によるダイヤモンド新規合成法の開発」

福井信孝
大阪電気通信大学院工学研究科 川口研究室・大阪市立工業研究所
「窒素リッチなアミノ酸を使用した非貴金属系酸素還元触媒におけるFe-Nx活性点の生成」